東京高等裁判所 昭和55年(行コ)11号 判決 1982年10月29日
東京都渋谷区二丁目九番一〇号青山台ビル四〇一号
(送達場所 東京都大田区南馬込三丁目三番一二号関口光太郎方)
控訴人
三陽地所株式会社
右代表者代表取締役
関口光太郎
右訴訟代理人弁護士
藤井英男
同
古口章
東京都渋谷区宇田川町一番三号
被控訴人
渋谷税務署長
中野猛夫
右訴訟代理人弁護士
国吉良雄
右訴訟復代理人弁護士
国吉克典
被控訴人指定代理任
高木秀男
同
重野良二
同
青葉金郷
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴人は、「(一)原判決を取り消す。(二)被控訴人が昭五一年六月三〇日付でした控訴人の昭和四八年一〇月一日から同四九年九月三〇日までの事業年度の法人税の更正処分並びに無申告加算税及び重加算税の賦課決定処分を取り消す。(三)訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上、法律上の主張及び証拠の関係は、次のように附加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する(但し、原判決一〇枚目表二行目に「いわゆる縄延び分が認められた場合には後日」とあるのを「増減あるときは、坪一〇万五〇〇〇円の単価により」と、同一一枚目裏四行目に「隣接地の借地権を買い取り、訴外秋岡春雄に」とあるのを「右同日隣接地の借地人訴外秋岡春雄の借地権を買い取り、同訴外人に」とそれぞれ改める。)。
一 当事者の主張関係
1 控訴人
控訴人は、昭和四八年五月二二日、訴外福岡廣、同健一、同辰雄の三兄弟の共有に係る本件土地を代金七九〇二万三三五〇円で買い受けたが、右福岡廣から、相続税の納付や財産処分に関し同兄弟が世話になっている叔父の訴外福岡皓の指示と依頼により本件土地を丸福住宅株式会社代表取締役と称する訴外柳達雄に売却しなければならないこととなったので上記売買契約を解約して欲しい旨の申入を受け、いったんは福岡廣に強く抗議し、損害賠償を請求することについても弁護士と相談したが、控訴人としては、本件土地を入手するには福岡廣らと事を構えるよりは右柳達雄と交渉して同人から買い受ける方が得策であると判断し、控訴人は、右解約の申入に応じ、改めて、同月三〇日に右柳達雄から一億二三〇六万円で本件土地を買い受けたものである。
右控訴人と柳達雄間の売買契約書(甲第一号証の一。なお、同契約書の表紙は、昭和五一年一月ころ税務申告を依頼した税理士神野金雄の指示により破損等を防止するため附したものであり、契約書と表紙の割印もその際にしたものである。)は、昭和四八年五月三〇日日本信託銀行大船支店の応接室において同銀行の行員牧野利博らが立ち会って作成されたものであり(甲第一四号証の一ないし三)、右契約の締結は真実のものである。
2 被控訴人
控訴人が主張する控訴人と柳達雄間の売買は、控訴人が主張する右契約書の締結に至る経緯及び右契約内容にかんがみて架空のものである。控訴人主張の昭和四八年五月三〇日に日本信託銀行大船支店において右契約につき作成されたとする契約書(甲第一号証の一)は虚構のものであり、甲第一号証の一ないし三の写真も右契約の締結とは関係のないものである。
二 証拠関係
1 控訴人は、甲第一四号証の一ないし三を提出し、当審証人山崎哲樹、同福岡廣、同牧野利博、同神野金雄、同福岡辰雄の各証言を援用し、乙第二九号証は原本の存在を認めるが「丸福(株)分」とある記載部分の成立は不知、その余の成立は認める、乙第三二号証の二のうち右肩の「三陽地所23日」とある書込部分の成立は不知、その余の成立は認める、乙第三六号証の原本の存在及び成立は不知、乙第三四、第三五号証は成立はいずれも不知、その余の後記乙号各証の成立はいずれも認める、と述べた。
2 被控訴人は、乙第二九号ないし第三一号証、第三二号証の一、二、第三三号ないし第三七号証、第三八号証の一ないし三を提出し、甲第一四号証の一ないし三は撮影者、撮影年月日、撮影場所はいずれも不知、と述べた。
理由
一 当裁判所も、控訴人の本訴請求を失当として棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のように附加、訂正するほかは、原判決理由説示のとおりであるから、ここにこれを引用する。
1 原判決一四枚目表一〇行目に「証人福岡廣及び同柳達雄」とあるのを「甲第一四号証の一ないし三、原審証人柳達雄、当審証人山崎哲樹、同牧野利博、同神野金雄、同福岡辰雄、原審及び当審証人福岡廣」と改める。
2 原判決一五枚目表五、六行目に「証人福岡廣及び同柳達雄」とあるのを「原審証人柳達雄並びに原審及び当審証人福岡廣」と改め、同八行目に「同額であり」とある次に「(なお、当審証人山崎哲樹、同福岡廣の各証言中には、訴外福岡廣らが同柳達雄に本件土地を売却したのは、訴外福岡皓の指示によるものであり、契約上は控訴人との間の売買代金と同額であるけれども、福岡廣に裏金を上積みすることが条件であった旨の供述があるが、その裏金の総額も授受の当事者及びその内訳も不明の点が多く、右供述はにわかに措信しがたい。)」を加える。
3 原判決一七枚目裏一行目に「証人福岡廣」とあるのを「原審及び当審証人福岡廣」と、同一八枚目表二行目に「証人尋問」とあるのを「原審における証人尋問」と改め、同末行目に「支払った」とある次に「(なお、福岡廣は、当審においては、売買代金の上積み分一〇〇〇万円のうち三〇〇万円を自分がもらい、残りの七〇〇万円のそのほかに謝礼三〇〇万円、合計一〇〇〇万円を福岡皓に渡した旨供述している。)」を加える。
4 原判決二〇枚目表八行目の次に次のように加える。「(五) また、控訴人は、控訴人と上記柳達雄間の本件土地の売買契約は、昭和四八年五月三〇日に、日本信託銀行大船支店において、同銀行の行員牧野利博らが立ち会って締結され、その際甲第一号証の一の契約書が作成されたものであり、真実のものである旨主張し、甲第一四号証の一ないし三の写真を提出し、かつ、右主張にそうものとして当審証人山崎哲樹、同福岡廣、同牧野利博、同福岡辰雄の各証言がある。しかしながら、右各証言の内容は、控訴人と福岡廣らの間の本件土地の売買契約書(乙第一号証)の作成については、比較的明確に供述しているが、控訴人と柳達雄間の本件土地の売買契約書(甲第一号証の一)の作成については、控訴人自体その表紙は昭和五一年一月ころ税理士の指示により貼付し契約書と合綴した上割印したものである旨主張するのみならず、右契約書の作成の経緯、年月日、立会人等の点については曖昧な供述が多く、右控訴人提出の各証拠によっても、控訴人と柳達雄間の売買契約の成立を認めるに十分でない。」
二 よって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 吉井直昭 裁判官 浦野雄幸 裁判長裁判官小林信次は、転任のため署名、押印することができない。裁判官 吉井直昭)